[百光 Hyakkou](72min 2013)
『百光』は東京都市部に見られる住宅事情と雇用形態の中で、貧しく生活している人間が形成する部屋の風景を記録した映画といえる。
この映画の中で、私は自分の部屋で約一年間記録した動画を、『布団』、『台所』、『客人』、『窓』、の4つの章に分類し、それぞれ異なる方法で対象を描いている   『布団』では私と当時の恋人である同居人との私小説的な関係 性。『台所』では生活の中で次第に増えていった台所用品のポートレート。『客人』では友人との会話から、私たちが使う事のできる外食店はどんなものか、といったような、行動様式に影響を与えている経済的外圧。『窓』では窓からの眺めの時間的、季節的な変化によって形成されていく時間的な層。  といったように。
この映画の鑑賞者は4つの章を各人がモンタージュすることになる。それによって、ある一つの部屋の風景が、時間、事物、経験などを何層も堆積させながら生成されていく過程に立ち会うことになる。
人間はどのような環境に置かれても、このような過程を経て特別な眺めを獲得していくのである。